NISAの投資信託は、なぜ「長期」がいいと言われるのか。複利とリスクの仕組みを整理してみた

くらしとお金

NISAで投資信託を積み立てている方の中には、「長期投資がいいと聞いたので続けているけれど、具体的になぜいいのかは説明できない」という方も多いのではないでしょうか。

以前、NISAの仕組みと投資信託の選び方についての記事を書いた際、長期で運用した場合に資産額がどれくらい増えるかを試算しました。ただ、そこでは長期運用が具体的になぜ良いとされているのか、その理由までは踏み込んで説明できていませんでした。

そこで今回は、複利の仕組み、長期保有によってリスクがどう変化するか、積立(ドルコスト平均法)の効果、そして私自身が日々の値動きとどう向き合っているかを、あらためて整理してみることにしました。なお、今回の内容は、前回の記事でご紹介したような、低コストで広く分散されたインデックス型の投資信託を選んでいることを前提にしています。商品選びのポイントについては、前回の記事もあわせてご覧ください。

これから長期投資を始める方、すでに始めているけれど「なぜ良いのか」を言葉にできていない方の参考になれば嬉しいです。

① そもそも複利とは?なぜ増え方が加速するのかを数字で確認する

複利という言葉は知っていても、それがどれくらいの差を生むのか、実感を持てている方は意外と少ないかもしれません。ここでは、複利の仕組みをシンプルな数字で確認していきます。

複利と単利の違い

複利とは、運用で得た利益を元本に組み入れて、その合計額に対してさらに利益が発生していく仕組みです。反対に、利益を元本に組み入れず、常に当初の元本に対してのみ利益が発生する仕組みを単利と呼びます。

言葉だけではイメージしづらいので、具体的な数字で比較してみます。ここではシンプルに、100万円を年利5%で一括投資した場合、単利と複利でどれくらい差が生まれるのかを見てみます(※投資信託の積立投資とは前提が異なる、複利の性質を示すための簡易な例です)。

期間単利での評価額
(期間終了時点)
複利での評価額
(期間終了時点)
増加額(複利)
〜5年目125万円約127.6万円約27.6万円
5〜10年目150万円約162.9万円約35.3万円
10〜15年目175万円約207.9万円約45.0万円
15〜20年目200万円約265.3万円約57.4万円

単利では毎年一定額(この例では5万円)ずつ評価額が増えていくのに対し、複利では前年までに増えた利益にも翌年の利益が乗ってきます。表の一番右の列を見ると、その効果がよくわかります。最初の5年間(〜5年目)の増加額は約27.6万円ですが、次の5年間(5〜10年目)では約35.3万円、その次(10〜15年目)では約45.0万円と、同じ5年間でも後になるほど増加額自体が大きくなっています。これが「運用期間が長くなるほど、増え方のペースが加速する」複利の性質です。

この章のポイント

複利は、運用期間が長くなるほど効果を発揮する仕組みです。投資信託を長期で積み立てて運用する場合も、この複利の性質によって、後半になるほど資産の増加ペースは加速していきます(前回の試算でも、20年間の後半にかけて評価額の伸びが加速していました)。次の章では、複利による「リターン」の話だけでなく、長期保有によって「リスク」自体がどう変化するのかを見ていきます。

② 長期保有で「リスク」自体が下がる理由

前の章では、複利によって資産の増え方が加速していくことを確認しました。ここでは、リターンの話とは別に、長期保有によって「リスク」そのものがどう変化するのかを見ていきます。

投資における「リスク」とは

投資の世界で「リスク」というと、危険なもの、というイメージを持たれがちですが、正確には「リターンの振れ幅(ブレの大きさ)」のことを指します。ある年は大きく増え、ある年は大きく減る、という値動きの不確実性そのものがリスクです。

保有期間が長くなるほど、振れ幅は小さくなる

野村アセットマネジメントが公開しているデータでは、世界株式(MSCI ACWI)に投資した場合、保有期間ごとの年率リターンの振れ幅(最大値・最小値)が以下のように示されています。

保有期間が1年の場合、年率リターンは最大+59%から最小-48%までと非常に大きく振れています。これが5年になると+21%〜-5%、10年で+14%〜-2%と、期間が長くなるにつれて振れ幅は小さくなっていきます。さらに15年になると最小値も+3%とプラスに転じ、20年では+9%〜+4%の範囲に収まっています。

出典:野村アセットマネジメント「長期投資の『長期』とは何年?メリットと併せて解説」(期間:1987年12月末〜2026年3月末、世界株式(MSCI ACWI)を対象としたシミュレーション)https://www.nomura-am.co.jp/sodateru/start/long-term-investment/how-many-long-term.html

分散投資を組み合わせると、さらに振れ幅は抑えられる

なお、これは株式100%で運用した場合のデータです。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が公開しているシミュレーションでは、国内外の株式・債券に均等に分散して投資した場合、保有期間を10年に延ばすと、投資元本を下回ったケースは見られなかった、という結果が示されています。株式だけに投資するか、債券なども組み合わせて分散するかによって具体的な年数の目安は変わりますが、「保有期間が長くなるほど振れ幅が縮小する」という傾向自体は共通しています。

出典:年金積立金管理運用独立行政法人「長期分散投資の効果」https://www.gpif.go.jp/gpif/long-term-investment.html

いずれも過去のデータに基づくシミュレーションであり、将来の運用成果を保証するものではない点にはご留意ください。それでも、保有期間を延ばすことで、良い年と悪い年の値動きが相殺され、結果として振れ幅(リスク)が小さくなっていく傾向がある、というのは押さえておきたいポイントです。

この章のポイント

長期保有には、複利によってリターンが加速するだけでなく、良い年と悪い年が相殺されることでリスク(振れ幅)自体が小さくなっていく、という側面もあります。ただし、ここまでの話は「保有期間」についてのものです。次の章では、そもそも「どう投資に回していくか」、つまり積立(ドルコスト平均法)がなぜ有効とされるのかを見ていきます。

③ 積立(ドルコスト平均法)が生み出す「時間の分散」

①〜②では、投資信託を「どれくらいの期間」保有するかによって、リターンやリスクがどう変わるかを見てきました。ここからは視点を変えて、「どうやって投資に回していくか」という積立の仕組みについて見ていきます。

一括投資と積立投資の違い

投資の方法には、まとまった資金を一度に投じる「一括投資」と、一定額を継続的に投じていく「積立投資」があります。前回の記事でご紹介した「つみたて投資枠」は、まさにこの積立投資を行うための枠です。

積立投資が持つ効果の一つが、「ドルコスト平均法」と呼ばれる考え方です。これは、価格が変動する商品を、一定の金額で、一定のタイミングごとに買い続けることで、平均の購入単価を平準化できる、という仕組みです。

なぜ平均購入単価が下がるのか、数字で確認する

言葉だけでは分かりづらいので、具体的な数字で見てみます。投資信託には「基準価額」(投資信託の値段にあたるもので、1万口あたりの価格で表されます)という指標があり、これが日々変動しています。同じ1万円を投資する場合でも、基準価額が高いときは購入できる「口数」(投資信託を購入する単位)が少なく、逆に基準価額が安いときは多くの口数を購入できます。

ある投資信託の基準価額が、4か月の間に以下のように変動したとします。

基準価額毎月1万円ずつ
購入した場合の口数
1か月目10,000円1.00万口
2か月目5,000円2.00万口
3か月目8,000円1.25万口
4か月目10,000円1.00万口
合計(単純平均8,250円)5.25万口(投資額合計4万円)

4か月間の基準価額を単純に平均すると8,250円ですが、毎月同じ金額(1万円)で買い続けた場合の平均購入単価は、4万円÷5.25万口で約7,619円になります。これは単純平均の8,250円よりも低い金額です。

理由はシンプルで、価格が下がった月(2か月目)には自動的に多くの口数を買うことになり、価格が高い月には少ない口数しか買わないことになるためです。毎月一定の「金額」を買い続けることで、結果的に平均購入単価が平準化される、というのがドルコスト平均法の仕組みです。

この方法にも注意点がある

ただし、これは価格が上下しながら推移する場合に効果を発揮する仕組みです。相場が一貫して右肩上がりに上昇し続ける局面では、早い段階でまとまった資金を一括投資したほうが、結果的にリターンが大きくなるケースもあります。積立投資は「高値掴みのリスクを抑える」ための方法であって、「必ず一括投資より有利になる」とは限らない点には注意が必要です。

この章のポイント

積立投資には、価格変動がある中で購入単価を平準化し、高値掴みのリスクを抑える効果があります。①②で見てきた「長期保有」の効果と、この章で見た「時間を分けて投資する」効果を組み合わせることで、長期・積立・分散という考え方が成り立っています。次の章では、こうした仕組みを理解した上でも大切になる、長期投資を続けるための向き合い方について、私自身の経験も交えてお伝えします。

④ 長期投資を続けるために、私が意識していること

①〜③で見てきたように、長期・積立にはリターンやリスクの面でメリットがあります。とはいえ、実際に運用していると、大きく値下がりする局面に直面すること自体は避けられません。ここでは、そうした場面も含めて、私自身が投資信託の運用を続ける上で意識していることをお伝えします。

投資に回すお金と、生活費を分けて考える

投資を続けるうえで大切にしているのが、「投資に回すお金」と「当面の生活費」を分けて考えることです。私の場合、目安として夫婦ふたり分の生活費の半年分を、現金で確保しておくことを目標にしています。正直なところ、まだこの目標を達成できているわけではなく、現在は毎月3万円を積立に回しながら、並行して確保を進めている段階です。この半年分の確保ができたら、積立額の増額も検討したいと考えています。また、この目安は今の夫婦ふたりの生活を前提にしたものなので、家族構成が変われば、あらためて見直すつもりです。

生活費を賄う分の現金を確保しておくことで、仮に投資信託の評価額が大きく下がっている局面であっても、生活のために取り崩す必要に迫られずに済みます。これが、値動きに振り回されずにいられる土台になっていると感じています。

値動きは、月に1度くらいの頻度で確認する

長期運用を前提にしているため、日々の値動きはあまり気にしないようにしています。とはいえ全く見ないわけではなく、月末に1度、状況を確認する、というペースを続けています。

投資の目的を意識しておく

値動きに振り回されないためには、「何のために投資をしているか」を意識しておくことも大切だと感じています。私自身、まだ明確に言葉にできているわけではありませんが、老後資金の確保と、住宅ローンの将来的な繰上返済に向けた資金の確保を、長期投資の目的として考えています。

短期的に大きく増やそうとすると、その分リスクも大きくなります。そうではなく、長期的な目線で資産形成をしていく、という前提を持っておくことが、日々の値動きに一喜一憂しないことにつながっていると感じています。

この章のポイント

長期投資を続けるうえで大切なのは、値動きに一喜一憂しないための仕組みを、あらかじめ整えておくことだと感じています。生活防衛資金を確保しておくこと、確認の頻度を決めておくこと、そして何のために投資をしているのかを意識しておくこと。この3つが、私自身が実践している向き合い方です。

⑤ まとめ

ここまで、NISAの投資信託を長期で運用することが良いと言われる理由について、4つの視点から見てきました。

複利の効果によって、資産の増え方は運用期間が長くなるほど加速していきます(①)。また、保有期間を延ばすことで、良い年と悪い年の値動きが相殺され、リターンの振れ幅(リスク)自体も小さくなっていく傾向があります(②)。さらに、積立(ドルコスト平均法)を組み合わせることで、価格が変動する中でも購入単価を平準化し、高値掴みのリスクを抑えることができます(③)。そして、こうした仕組みを理解した上でも、値動きに振り回されないための土台(生活防衛資金の確保、確認の頻度、投資の目的)を自分なりに整えておくことが大切だと感じています(④)。

「なぜ長期投資が良いのか」という問いに一言で答えるなら、時間を味方につけることで、複利によるリターンの伸びと、リスクの低減という、2つの効果を同時に得られるからだといえます。

住宅ローンを組んでいる方にとっても、資産計画の中で長期投資が重要な役割を担ってくるのではないかと思います。これからNISAで長期投資を始める方、すでに始めているけれど値動きに不安を感じている方にとって、この記事が「長期で続けていく」ための後押しになれば幸いです。

今後も家づくりやくらしとお金にまつわる情報を、実体験を交えながらお伝えしていきたいと思います。

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